推薦)安藤伸樹氏(全国健康保険協会理事長)

『すべては森から』(落合俊也・著)に対し、全国健康保険協会理事長・安藤伸樹氏よりご推薦をいただきました。

第1章では、スリランカにある本格的なアーユルヴェーダ施設の、バーベリンビーチ・アーユルヴェーダリゾートが紹介されている。「人は病気になったらその病を治そうと病院に行く。しかし、病院は患者の病気を治そうとするが、その患者を幸福にしようとする視点までは持ち合わせていない。本来健康は幸福を得るための必要条件である。アーユルヴェーダの施設は、人間にとっての自然、健康、幸福は本来一体のものだと考えて作られている。現代の行因果その役割の原点に立ち返って、人を幸福にするところまでのサービスを展開すれば、医療システムは根本的に変わるだろう。」とある。そのような医療システムに少しでも近づけるために尽力したいと感じた。「そこには、抜けるような青さの空と海があり、森の緑が太陽の光で鮮やかに輝き、その中に生きるすべてのものが自然と一体となっている。宿泊者が森の上を歩いているような感覚になるデザイン!!」と表現している。ぜひ、行ってみたい!!

第3章では、ラキ セナナヤキ氏が登場する。スリランカが生んだ世界的な芸術家であり、建築家である。この章では、ヒトの遺伝子に適応している正しい住まい環境の在り方について語られており、「遺伝子が求める環境が森林(熱帯雨林)であるという前提にたつと、現在の人工環境や経済社会の上に構築された我々の価値観や好みは、我々のもつ遺伝子とは適合しない。遺伝子が求める環境に入ることで、長い間忘れていた本来の感覚を取り戻すことができる。」と述べている。そしてその感覚を取り戻すためには、「太陽の生み出す複雑な環境リズムと我々の体内リズムを数日間重ね合わせる機会をつくればいい」とラキ氏が言う。現代の住まいは、ただ単に自分たちが楽をして住むことが優先され、ヒトの身体と心にとって本当に良いものなのかは、考慮されていないということがよく理解できた。現代人がメンタル不調を訴える原因もこの辺にあるのではないだろうか?  ラキ氏の設計で一貫しているコンセプトが、「建築は人の健康のためにある」ということと、設計をする際に森のリズムと海辺のリズム、太陽と月のリズム(周りの環境)を考慮に入れた設計をすることにより、ヒトの遺伝子に心地よい住まいとなるように考えているということに感動した。

終章では、アフリカでの様々な医療現場を経験してきた東京女子医科大学医学部教授の杉下智彦氏は、「本来の医療の目的である、身体的にも精神的にも困っている、本当に弱者の人達をサポートするシステムが、現代の医療の中で抜け落ちてしまっている。高齢者や障害者、貧困家庭が抱える様々な課題の解決は、診療報酬には繋がらないためなのか、診ようとしない。SDGSの誰一人として取り残さないという目標に反する。」と語っている。

2015年から健康保険にかかわる仕事をするようになり、特に働く現代人の中にうつ病などの精神疾患が、毎年増加していることを知り、森林空間を活用することにより、少しでも精神疾患になる人を減らすことができるのでは? と考え、「森つながり」の方達と交流を重ね、都会で働く人たちのストレスレベルを低減させ、一人ひとりのメンタルヘルス向上に役立つインフラづくりを、関係者たちと共に模索してきた。

建築にご興味がある方は勿論であるが、私としては、是非医療・保険関係の仕事に従事している方達にもご一読していただけたらと思う。

全国健康保険協会理事長 安藤 伸樹

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